古伊万里(こいまり)
17世紀初頭、肥前有田の地にて日本で初めて磁器の火が灯りました。最初期の「初期伊万里」は、茶人や大名に手渡され、国内の座敷を彩るために生まれたもの。
やがて17世紀後半には、染付の皿やそば猪口が庶民の暮らしを潤し、同時に海を越えてヨーロッパの王侯貴族の宴席を飾る金襴手や大皿が焼かれました。
一つの窯から生まれた器が、日常と異国、静けさと華やぎを結ぶ――古伊万里は、日本磁器の物語そのものです。
そば猪口(そばちょこ)
江戸の町にそばが香る頃、小ぶりの器が人々の手に渡りました。高さわずか五、六センチの円筒形――それがそば猪口です。
そばつゆを受けるために生まれながら、酒を酌み交わす盃となり、小鉢として食卓を支える器ともなりました。
染付の草花文や吉祥文は、日々の暮らしにさりげない喜びを添え、ひとつひとつが個性を宿しています。大量に焼かれながらも、同じものは二つとない――そば猪口は、江戸の息づかいを今に伝える小さな舞台です。








